お知らせ

2026/6/9

小笠原諸島父島列島周辺におけるザトウクジラの生息適地を初めて可視化―地形的要因との関係から空間分布を予測―

小笠原諸島は西部北太平洋におけるザトウクジラの重要な繁殖海域の一つとして知られており、毎年冬から春(12~5月)にかけて沿岸域に来遊します。

しかし、これまで、主要な分布域となっている父島列島周辺において「どこがザトウクジラにとって好適な場所であるのか」は科学的に明らかにされていませんでした。

本研究では、2013年および2015年から2018年の1月に実施した船舶による目視調査データを基に、2つの種分布モデルを用いてザトウクジラの発見位置と地形的要因との関係から父島列島周辺海域における生息適地を推測しました。

その結果、ザトウクジラの分布には「水深」と「海底傾斜」が強く影響しており、特に水深が最も重要な要因であることが明らかになりました。また、ザトウクジラは「浅く、海底傾斜が緩やかな海域」を好み、200m以浅の海域の中でも、特に水深50~60 m、海底傾斜0.5~0.8度の海域で生息適性が最大となることが予測されました。父島の西側海域では、東側海域と比較して生息適地がより広範囲に広がっていることも示されました。

本研究で作成された生息適地マップは、小笠原海域におけるザトウクジラの生息地利用をより深く理解することに繋がり、海域利用と保全の両立に資する重要な科学的知見として期待されます。

本研究成果は、2026年5月18日月付けで学術誌『Mammal Study』に掲載されました。

本研究で使用したデータの一部は、公益財団法人東京都島しょ振興公社による2015年度東京都地域振興補助事業の補助を受けて取得されました。また、本調査は小笠原ホエールウォッチング協会による特例許可(No. 1407、1506、1603、1706)のもと実施されました。

〇本研究のポイント

・小笠原諸島はザトウクジラの重要な繁殖海域の一つであるが、父島列島周辺海域における生息適地は科学的に明らかにされていなかった。

・計5年の目視調査データから2つの種分布モデルを用いて父島列島周辺海域における生息適地を推測した結果、ザトウクジラは「浅く、海底傾斜が緩やかな海域」を好み、特に水深50~60 m、海底傾斜0.5~0.8度の海域で生息適性が最大となることが予測された。

・父島の西側海域では、東側海域と比較して生息適地がより広範囲に広がっていることが示された。

・本研究成果は、小笠原海域におけるザトウクジラの生息地利用の理解の促進と海域利用と保全の両立に資する重要な科学的知見として期待される。

図.推測された父島列島周辺海域におけるザトウクジラの好適な地形条件と出現確率マップ

©Ogasawara Whale Watching Association

〇発表論文

【雑誌名】
・Mammal Study 51巻3号(2026年7月)

【著者名】
・辻井浩希(一般社団法人小笠原ホエールウォッチング協会、北海道大学大学院環境科学院)
・岡本亮介(一般社団法人小笠原ホエールウォッチング協会)※当時の所属
・村瀬弘人(東京海洋大学鯨類学研究室)
・三谷曜子(京都大学野生動物研究センター)

【タイトル】
・Predicting Habitat Suitability for Humpback Whales Megaptera novaeangliae Around the Chichijima Islands, Ogasawara Islands, Japan
(小笠原諸島父島列島周辺におけるザトウクジラの生息適地の予測)

【URL】
https://bioone.org/journals/mammal-study/volume-51/issue-3/ms2025-0036/Predicting-Habitat-Suitability-for-Humpback-Whales-Megaptera-novaeangliae-Around-the/10.3106/ms2025-0036.full

◆プレスリリース本文はこちらから

前のページへ戻る